瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Mar 30, 2015

Roger Bamberさんのこと

posted by KM
 
以前このブログでも少しだけ触れたRoger Bamberさんが、2月16日に亡くなりました。Rogerさんはウミグモ類及びタナイス類の分類学が専門で、ことウミグモの分類に関しては、ここ10年では最もactiveに活躍されていた方です。2005年に、グラスゴーでの学会に先立って、当時彼がcuratorを務めていたロンドンの自然史博物館に訪問したのが、私が彼と会った唯一の機会でした。その訪問がきっかけとなり、私のウミグモ関係の論文について投稿前の英文添削をお願いするようになりました。毎回劇的に改善された英文のおかげで論文受理までの日数が確実に短くなり、その丁寧な直しを見る事は私にとって相当勉強になりました。昨年春に一応完成した原稿についても、また厚かましく添削をお願いしたのですが、いつもはすぐ来る彼からの応答がこの時は全く返って来ず、それでもその頃はまだ彼の論文は相変わらず高頻度に出版されていたので、病気やケガの類いではなかろうと高を括っていたのですが、実は2014年1月にALSを発症し、その頃には既に厳しい闘病生活に入っていたことを後になって知りました。
 彼のパートナーで、一緒に故郷のサウサンプトンで海洋生物のコンサルト会社ARTOOを立ち上げたRoni Robbinsさんから、彼を偲ぶ会が開かれるので写真や彼とのエピソードを是非提供して欲しいと依頼され、2005年の訪問時の写真を探してみたのですが、博物館の標本室や展示室の写真は数多く撮っていたのに対し、彼が写っているのはわずかに3枚しかなく、今となっては大変悔やまれます。それでもその3枚を送ったところ、Roniさんは大変喜んでくれました。
博物館近くのパブにて。特に具体的な目的の無い、学会ついでの訪問だったので、滞在中何の話をしたかは正直よく覚えていないのですが、写真にも写っているLondon Prideを飲みながら、非常に心地よい時間が流れていたのは強く心に残っています。
彼の業績や経歴は、いずれobituaryの中でまとめて紹介されるものと思いますが、ウミグモについては分類を中心とした膨大な論文・著作があり、中でも"Arnaud F. & Bamber R.N. (1987) The biology of Pycnogonida. Adv. Mar. Biol. 24: 1–96."と"Bamber R.N. (2007) A holistic re-interpretation of the phylogeny of the Pycnogonida Latreille, 1810 (Arthropoda). Zootaxa 1668: 295–312."は、いずれも分類のみならずウミグモの生物学全般に関する優れた総説となっています。またウミグモ類のオンラインデータベースである"PycnoBase"を完成させ、私をはじめ多くの研究者がこのデータベースには多大な恩恵を受けています。当時北大の大学院でウミグモの分類の研究をしていた高橋芳枝さんが、私の訪問の少し後に数ヶ月間彼の研究室に滞在した際にはPycnoBase立ち上げの一部を手伝い、彼女の名前が謝辞に記されています。
 彼の非常にフランクな性格は多くの人達に愛され、彼が多くの論文を発表していたZootaxa誌では、彼の闘病中から彼を励ますための特集号が企画され、既に多くの原稿が集まっていたのですが、残念ながら近日中に追悼号として出版されることになります。またJournal of Crustacean Biology誌でも、追悼の意を込めた特別号もしくは特別セクションの出版が予定されています。私も前者にはguest editorとして、後者には掲載論文のauthorとして関わっており、更に今後PycnoBaseについても何らかの形で関わっていく見込みですが、まだまだほんのわずかしか恩返しできていません。RoniさんによるとRogerさんは1949年9月1日生まれとのこと。享年65歳とはあまりにも早く、その死が大変惜しまれます。
昨年末に届いた最後のカード。以前いただいたものとの比較から、署名はご本人のものだと思われます。まだ書くことが出来た時に、一生懸命書かれたものかもしれません。

1 comment:

  1. I have just found this - it is lovely to read. Thank you for these words about our great friend and colleague Roger. Much missed.

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