瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Oct 1, 2014

祝! 諏訪僚太さん 論文出版!

今年の3月に任期を終えた瀬戸臨海実験所元JSPS特別研究員の諏訪僚太さんが、在任中に行った共同研究の論文が新たに出版されました。
Ryota Suwa, Masayoshi Hatta and Kazuhiko Ichikawa (2014)

Proton dynamic and material energetic control on calcification and decalcification

Chemistry, DOI:10.1002/chem.201402210

  本論文は、サンゴなどの石灰化生物の石灰化はこれまで考えられてきた炭酸イオンCO32-とカルシウムイオンCa2+による沈殿/溶解の物理的可逆反応よりも、存在量の多い炭酸水素イオンHCO3とカルシウムイオンCa2+による石灰化/脱石灰化の可逆的酸解離反応から起こっている可能性を炭酸系イオンの溶解したNaCl溶液への強酸・アルカリ滴定実験や熱力学におけるギブスの自由エネルギーの解析により検証しています。また、酸性環境下における造礁サンゴの1種コユビミドリイシAcropora digitifera稚個体の骨格形成部位のpH低下量についても暴露実験を用いた骨格重量と海水のpH及びCO2濃度の変化を用いた解析によって推定しています。 

実験の結果、海洋酸性化がサンゴなどの石灰化に及ぼす影響は炭酸イオン濃度の低下によるものでは無く、pH低下(プロトンの増加)によって石灰化/脱石灰化の化学反応Ca2+ + HCO3 CaCO3 + H+において脱石灰化側に平衡が寄ることで引き起こされていることや、CO2排出が多くなる産業革命以前と西暦2100年の海洋のCO2濃度条件ではサンゴ反口側外胚葉下部の石灰化部位に約-0.3pH低下が生じている可能性が示唆されました。 

ミドリイシ属サンゴの群落。沖縄県渡嘉敷島水深5m。

本研究はお茶の水大学、北海道大学との共同研究になります。また、この研究は瀬戸臨海実験所所長の白山先生から北海道大学名誉教授の市川先生を紹介して頂いたことに端を発した研究になります。白山先生、有り難うございました。