瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Aug 1, 2014

祝! 諏訪僚太さん 論文出版


posted by AA

この3月に任期を終えた瀬戸臨海実験所元JSPS特別研究員の諏訪僚太さんが、在任中に行った共同研究の論文が出版されました。おめでとうございます!

Ryota Suwa, Chisato Kataoka, Shosaku Kashiwada (2014) Effects of silver nanocolloids on early life stages of the scleractinian coral Acropora japonica. Marine Environmental Research 99, pp 198-203 
Kyoto University Research Information Repository:
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金属や炭素を原料とするナノマテリアルはその急速な普及から水環境への流入による生態系へのリスクが高まっていますが、そのリスクについては未解明な点が多いのが現状です。近年、衛生用品に用いられているナノマテリアルの殆どは銀ナノマテリアルですが、その海洋生物への影響についての報告は多くありません。

今回の論文では、銀ナノマテリアルの海洋生物への影響を明らかにするために環境毒性試験によく用いられている造礁サンゴ類ミドリイシ属サンゴであるニホンミドリイシ(Acropora japonica Veron, 2002)の初期生活史を用いた曝露実験が行われました。

結果としては、授精率、幼生生残率、幼生変態率及び一次ポリプの成長に対して0.05 mg/L以上の濃度に曝露した実験区において、対象区に比べて有意なマイナス影響がみられました。





しかしながらナノマテリアルの影響査定は単純ではなく、ナノマテリアルの粒径や化学的な修飾の有無、イオン化の度合いによって影響が異なることが分かっています。今回用いられたナノマテリアルは化学的な修飾の無い粒径57.2nmの銀ナノコロイドですが、海水中では速やかに全てイオン化していたことが分かっています。銀ナノマテリアルは医学、材料、光学、抗菌剤などその用途は急速に拡大しており、今後は海水中でイオン化をしないように化学修飾された銀ナノマテリアルの影響や生体内蓄積の影響、その作用機構などについての研究が進み、環境へのリスクを防ぐために必要な情報が蓄積されることが望まれます。 


本研究は同志社大学名誉教授であり、瀬戸臨海実験所にてEcotoxicologyに関する研究を長年続けておられる小林直正先生からの研究アドバイスや研究者のご紹介を頂くことで行われました。小林先生、有り難うございました。