瀬戸臨海実験所公式ブログ ‐ 地球の海と生命を科学する人々の日常。

Oct 11, 2013

動物学会(各論その4)カブトガニ博物館編

2013年9月27日

皆さんは不思議の扉を開いたことがありますか?
現実では起こり得ない、常識では考えられない、そんな体験。
なるほど、確かに現実の日々は単調で退屈なものなのかも知れません。
でも、ほんのちょっと、世界を違う視点から眺めてみるとどうでしょう?

例えば、鏡越しに時計を見るように。
例えば、万華鏡で見慣れた風景を覗いてみたり。
例えば、祭囃子が狂い踊る縁日に行ってみたり。

それは、鏡の中の自分が今どの時間帯にいるのかが曖昧になって。
それは、自分のいる世界が不気味に廻っていて。
それは、日常が消え、狂気じみた非日常があって。

そんな風にその気になって探してみれば、存外、不思議はあなたのすぐそばにあるのかもしれません。

現実は小説より奇なり。この世はとても摩訶不思議。奇想天外。奇々怪々。

ふふっ。前置きが長くなってしまいましたね。では私たちが体験した、ほんの少し不思議な体験を話す事にいたしましょう。

その日は、なんといいますか、秋晴れという言葉がぴったりの日でした。
宮崎先生、岡西さん、千徳さん、藤本さん、そして私の5人は愉快にドライブを楽しんでいたのです。これから私たちがどんな体験をするのか、今はまだ知りもせずに。
今になって思います、あの時もし私たちが、いいえ、これは意味がないですね、やめておきます。とにかく、岡山駅から車を走らせて1時間半というところでしょうか?小高い丘が見えてきたのです。そしてその丘を車で越えようとした時、私は何かを、これが第六感とでもいうものでしょうか?............えぇ、「何か」を感じたのです。腕を見ると、鳥肌が立っていました。
丘を越えると、広い公園があり、ここは気持ちが良さそうだからと車を止めました。風が頬をなで、背伸びすると、まだ夏草の香りがしました。



だけど、私たちが日常を感じることができたのはここまででした。

足元にはお盆の頃に咲き乱れる赤い花が咲いていて、この花の名前は何だったか、どうしても思い出せませんでした。




「...............妙だね。」
岡西さんが言います。

「え?」
岡西さんが前方の岩山を見上げ、尋常ではない顔をしていました。それが私を不安にさせました。誤魔化しようのない「違和感」。それは私も感じていましたが。

私は子供の頃に怖い夢を見ました。稲荷神社の連続した赤い鳥居を永遠とくぐり続け、そこから出られなくなってしまう夢。そこは真っ赤な紅葉が絶え間なく降り続いていて、足元一面には、何百本もの「かざぐるま」が廻っていました。ずっと彷徨っていると、奥の鳥居に何かが立っていて、それは................それは。夜中に目が覚めて、怖くなって母親に泣きついたのを覚えています。その時に感じた不安に似ていました。










........いいえ、まさか。そんな筈ありません。2013年9月27日現在。今や、鉄の塊が空を飛び、小さな箱一つで地球の裏側の人と連絡が取れるこの時代に、恐竜が公園を闊歩しているなんて、そんな事を話でもしたらクラスで笑い者になること間違いなしです。妄言も甚だしいです。だけど、私の目の前には恐竜が確かにいたのです。その否定しようのない事実が、私の常識的な思考の部分を凌駕して、しばらく、動くことができませんでした。まったく、恐竜やタイムトラベルは小説だけで十分ではないでしょうか。次の瞬間、私は走っていました。他の方々も走っていました。それはそうです。目の前に恐竜が現れたら走って逃げるのが得策です。そうでなければ食べられてしまいます。むしゃむしゃ。「怖い」という恐怖の感情だけが行動の動機となって機械的に私たちの足を動かし続けます。......ただ、宮崎先生は歩いていました。逃げるどころか、写真を撮りながら、悠然と私たちの後を追ってきます。いったいどこまで度胸がお有りになるのかしらん。私はきらきらした目で宮崎先生を見つめます。

私たちがたどり着いたのはドーム状の建物でした。その入り口には「カブトガニ博物館」と書かれていました。





「いらっしゃいませ....。」
中にはいるとエントランスに「受付」と書かれた部屋があり、その中に女性が居ました。

「どうぞ....お楽しみくださいませ。」
受付の女性は奥の部屋を指して言います。口元に、笑みを浮かべて。















さっそくカブトガニがいました。ふふっ。かわいいですね。私は「ウミグモ」という生物を研究しているのですけれど、このカブトガニはそのウミグモに近縁で、「カブトガニ博物館」と見て、とてもわくわくしていました。








カブトガニの令期の展示や、生態についての解説もありまして、想像以上に私の知的好奇心をくすぐります。





こんなに大きなカブトガニの模型もありました。これ、手元のレバーを傾けたら動くんですよ。わくわく。ふいに、はっと我に帰りました。あぁ、とうとう私たちは不思議の世界の奥深くにまで来てしまったようです。ちゃんと戻れるのでしょうか。不安になって岡西さんや宮崎先生の顔を見ました。二人とも、目をらんらんと輝かせていました。その時に、あぁ、もう駄目だと、そう思いました。





カブトガニは「生きた化石」ということで、カブトガニ以外にも沢山の古代生物の展示がありました。これは太古のサメの口だそうです。これがさっきの恐竜のように、生きた形で復活していなくて良かったと、心からそう思いました。





恐竜の骨の展示です。...............少し、展示品が動いた気がしました。気のせいでしょうか?

あぁ、もう戻れない。この展示を見て、私の不安は確信に変わりました。







ご覧ください。4人はもうこの博物館の虜になってしまいました。縦横無尽に、子供のように、無秩序に、館内狭しと走り回ります。もう私の声も届きません。どんなに声を張り上げても、どんなに何度も呼びかけても、4人は展示から顔を上げてくれなくなりました。


「岡西さん!!」

「千徳さん!!ねぇ!聞こえているんでしょう!?」

「藤本さん!!ほら!いつものように私を笑ってくださいよ?!」

「先生!!宮崎先生!!せんっ..................................先生.........................。」



「みんな??!ねぇ、私の声を聞いて!? ねぇ?!ねぇってば!!!!」




そして、4人は何かに取り憑かれたように、博物館の奥へと、足を進めていったのです。








最後に私たちが見たものは。






























それから事はあまりよく覚えていません。とにかく必死で走って逃げました。

気が付けば、私たちは、晴天の空の下に帰っていました。

目の前には海が広がり、私たちは、ただただ茫然と、その光景を眺めていました。

つい先ほどまでの出来事が、夢か現(うつつ)かも定かでないまま。





皆さんは不思議の扉を開いたことがありますか?
現実では起こり得ない、常識では考えられない、そんな体験。
なるほど、確かに現実の日々は単調で退屈なものなのかも知れません。
でも、ほんのちょっと、世界を違う視点から眺めてみるとどうでしょう?


春に舞い散る千本桜

夏に乱れる彼岸花

秋に踊るは宵紅葉

冬に雪花と大吟醸


......................はて、何の話をしていたでしょうか?



まぁ、それはそれとして。



今宵もまた、不思議の扉が開くようです。



ほら、あなたのすぐ近くにも..................................。



posted by 望月